今回はフルオーダーをオススメする内容と私がフルオーダーでスーツを作る理由となっています。
こんな方にフルオーダーがおすすめ
- サイズがぴったりを選んだはずの既製品のスーツを着て肩がこるなどストレスを感じる
- 社長や政治家など社会的地位の高い方、またはそのような人たちに会う方
- 既製品にはないデザインや色、柄のものが欲しい
既製品などで肩がこるという方にもフルオーダーはおすすめです。
既製品は最大公約数に合わせて作られているので大多数の人が着れるように作られています。しかし学生時代にスポーツをしていて筋肉が発達している人たちにとっては窮屈に感じることが多くあります。
下の項目でも説明しますが、サイズが合っていないスーツを着ているとストレスに感じるばかりか見た目も悪いです。
これについては以前こちらで軽く紹介しました。内容としては肩周りのフィット感が着心地を左右するという内容でした
既製品が悪いと言っているわけではなくフルオーダーを経験するとスーツを仕立てるのが楽しくなるばかりか、スーツについてもっと興味を持てるようになります。
自身の体系の型紙を起こしてもらってクセなどを微調整して作成されたフルオーダースーツの着心地は既製とは比較できないほどに良いです。
ジャケットを羽織っていることを忘れるほど着心地が良いです。
かつて私はフルオーダーのお店に勤めていました。
そこでは実際にフィッターが採寸を取り、型紙を起こして生地を裁断し、それを工場に送って仮縫いを作り、出来上がった仮縫いを着てフィッターが肩や背中に変なシワがある場合や着丈、袖丈が長すぎたりする場合に詰めたりと微調整をして工場に送って本縫いを経て完成するというまさにフルオーダーのお店で働いていました。
実際に私も何着か作ったのですが着心地は今まで着ていたパターンオーダーとは全く別次元で驚愕でした。
パターンオーダーは結局は自分の体系に近い既製服が出来上がるイメージです。
パターンオーダーで仮縫いをしてから本縫いをするというお店も存在し、その場合は一般的なパターンオーダーと着心地を比較した場合はかなり良いですが、体系のクセへの対応には限界があります。
もくじ
フルオーダーにこだわる理由
着て楽にして見て美しい
私が求めるフルオーダーに拘るのはとは
着て楽にして見て美しい
極端な話ですが、スーツを着ている姿が客観的にみて美しいかというものはジャストサイズで着れている。この一点に尽きます。
それを再現できるのは既製品ではなくフルオーダーのみだからです。
後に説明していきますが、フルオーダーではシルエットについてミリ単位で調整ができます。つまりディティールに極限までこだわることが出来るんです。
そしてフルオーダー、ビスポークでは着心地についても調整ができますので一日着ていても疲れることがありません。着心地の悪いスーツというのは必ずどこかに変なシワができます。
フルオーダー、ビスポークでは仮縫い、中縫いでフィッティングを見ていく作業になりますので(もちろんディティールの調整もしますが)仕上がり時に変なシワができるというのはほとんどありません。(フィッターと縫製技術
にもよりますが)
もちろん各ブランドにおいてもデザイナーが理想とする形があり見惚れてしまうほど美しいのですが、私が求めるものとは違うというだけの話です。
フルオーダーやビスポークが最高であって既成ブランドはダメ!!と言っているわけではありません。
既製品にしかできないものも存在します。
例えば高級生地を使用して大量に作成することでコストを抑えるというのはまさに既製品にしかできない戦略の一つです。さらには既製品を作る機械なども日々確実に進化しているので仕上がりがとてもキレイです。
私が思うかっこいいスーツとは
私がかっこいいと思うスーツは...
流行に左右されない中庸で特徴のないスーツ
特徴がないというのは流行を気にしていないというニュアンスが多分に含まれています。
ファッションには流行がありますよね。
実はクラシックスーツにも流行があります。
少しずつですが着丈やズボン丈、襟幅などがミリ単位で毎年変化しています。
ザックリいうとバブル期に流行ったソフトスーツは例外として
- 1990年は着丈、ズボン丈ともに長いもので一見してリラックスしたようなものでした。余裕のある見た目から大人にこそ似合うスタイルで、若い人たちが真似をすると金持ちのボンボンにしか見えません。
- 2000年は1990年と比較して着丈、ズボン丈が短くなりましたが今の私たちが見ても少し長く感じ野暮ったく見えます。
- 2010年は着丈、ズボン丈がかなり短くなり、着丈は尻の割れ目が見えるほどで、ズボン丈もくるぶしが見えるほどでした。さらには全体的に窮屈でピタピタのスーツが流行していました。
- 2020年は2010年に比べても着丈、ズボン丈は長くなり2000年ころろに流行したスタイルに近づいています。とはいえ2000年ころのスーツを今着ても野暮ったい印象がありますが...
ザックリですがこんな感じでクラシックスーツであっても大きくなったり小さくなったりしているんですよね。
10年前のスーツは古臭くて着れないというのはあまりにも勿体ないと感じます。この流行を追いすぎずに中庸であることが本来のクラシックスーツだと思っています(私基準です)
そのあまりにも中庸すぎて特徴がないスーツが欲しいのです。
余談ですが流行をクラシックスーツに取り入れるためのヒントです。
面白いことに女性の流行の3年から5年遅れてクラシックスーツに取り入れます。
現在、各ブランドが発表しているコレクションなどをクラシックスーツに取り入れようとするその界隈ではダサい認定をされることが多分にあります。
着こなしにはルールがあるので流行っているブランドのスニーカーをそのまま普段着ているスーツに合わせるととってもダサい...
ちゃんと計算するとは現在のトップブランドが提案しているスタイルを踏襲し、かつそこにクラシックスーツのスタイルを少し混ぜることです。
主役にするアイテムを光らせるためにはオシャレな人たちは計算し、引き算をしています。ここがファッションの面白いところだと個人的には思います。
見栄えを悪くするシワのないスーツが欲しい
既製品の良いところ出来上がりが目の前にあることです。
そして既製品のスーツも美しいものはたくさんあります。しかしあくまで既製品とは最大公約数が着れるという程度のもので着心地において完全に私に合うわけがありません。
ですので既製品の着心地には限界があります。
さらに既製品のスーツを着て確認するのは正面からの姿のみです。その正面からのサイズ感と見栄えばかりに気を取られてしまって肝心なフィットを忘れている人が非常に多いです。
Louis Vuitton、Gucci、Diro、Dolce&Gabbanaなどデザイナーのいる高級ブランドなどではフィット感は重視せずにデザイナーが理想とするスタイルに価値を見出して高額を払って着るものなんです。
BrioniやErmenegildo Zegna、Dunhil、Kitonなどの超高級紳士服であってもやはり既製品ですのでたとえ超高級なカシミヤやSuper250'Sを使用しようがフィットには限界があり、各ブランドのスタイルに価値を見出して着るという点で高級ブランドと同じ感覚です。
ですから高級ブランドのスーツは高いから着心地が良いというのは大きな間違いです。ただしブランドにはよりますがパターンオーダーを受け付けているブランドも存在します。お気に入りのブランドで正面や後ろからの姿、着心地を追求したいという方には大変おすすめです。(ただし超高額です...)
私は特にお気に入りのブランドというものがなく(興味はありますが)できるだけ個性のない中庸なスーツをキレイに着たいと思っています。
キレイにというところがどういうかと言いますと変なシワがなく体の一部となって見えるということを意味します。
変なシワとは後ろから見た時に肩周りに張ったようなシワ(ツキジワ)や袖付けに向かって生地を巻き込んだようなシワがないこと、襟が首に吸い付いているように見えることが重要です。
さらに私は肩甲骨が大きいうえに前肩(巻き肩)ですので既製品のスーツを着ると肩甲骨あたりにシワができてしまいます。いわゆるツキジワです。
さらに肩が当たってしまうので襟が抜けてしまう和服でいうところの抜衣紋(ぬきえもん)になります。
このツキジワと抜衣紋は着心地が悪いうえに見た目において最悪です。
写真の襟について少し襟が抜けていますが、これは私が写真を撮るにあたって前にかがんでしまった結果襟が抜けて見えますが、これは抜き衣紋ではありません。
着心地を追求したい
着て楽の部分に当たります。
かつて私は高級フルオーダーの老舗で営業をしていました。
アパレルの販売員は皆さん自分が勤めているお店の服を着ます。これは当然で販売員であると同時にマネキンとしての役割を果たしているからです。
そうして実際に着ている販売員を見て自分自身も同じブランドの商品が欲しいとなるからです。これについては高級フルオーダーだろうが量販店だろうが同じことです。私も例にもれず同店のフルオーダのスーツを着ていました。
そして実際に自分自身の型紙から仮縫いを経て作られるスーツの着心地は既製品やパターンオーダーとは別次元でした。
正直申しまして、フルオーダーを一度体験してしまうと既製品では着心地においてストレスを感じます。
- 肩が当たる
- 背中がキツい
- 肩がこる
- 襟が抜ける
- 変なところにシワができる
こういった不満が出てきます。
先ほども申しましたが私の体系のクセで既製品やパターンオーダーを着るとツキジワや抜衣紋が発生します。
ようは腕を前に出すと肩が引っ掛かり窮屈に感じてしまい、しまいには肩がこるという状態です。
フルオーダーでは前肩の補正や肩甲骨のクセ取りをするので肩がこらずカーディガンでも羽織っているかのように楽なんです。
おそらくフルオーダーを経験しなければツキジワや抜衣紋など気にせず着心地も仕方ないと割り切れたのですが、一度でもフルオーダーを経験するとダメですね笑
スーツ、ジャケットは着て完成する
スーツやジャケットは着て体に馴染んで完成するものです。
既成でもフルオーダー、ビスポークでも出来上がったばかりのスーツは体に馴染んでいないの着心地は最悪の状態です。ジャケットはたえず捻じれたり引っ張られたりして少しずつ着ている人の体系になっていきスーツは完成します。
この体に馴染むまでの工程において既製品とフルオーダー、ビスポークでは雲泥の差がでます。
フルオーダー、ビスポークでは体系のクセ取りや補正を行っているので着なじんでいくとジャケットを着ていて軽く感じるようになります。
対して既製品はというと限界があります。ツキジワなどはお直しで取ることはできますが、体に馴染む工程でフルオーダーほど着心地が改善していくことはないです。
さらにクセの強い体系の人など既製品の型紙が合っていないかった場合は着心地が改善されることがないばかりか見た目にも着崩れてシワだらけになり見るも無残なものに仕上がることもあります。
おわりに
結局は私自身ファッションとして服を購入したり流行の服を購入して数年したら古臭くて感じて着れなくなるようなスーツではなく、着まくって生地が擦り切れて着れなくなるまで大切に着続けたいという想いが強く、大切に着続けるためにはどうしても中庸なスーツになってしまうんです。
スーツにも流行があると申しましたが、その時代に代表されるスタイルを常に着ていると正直かっこいいんでしょうけど数年も経つとダサいと思われてしまいます。今はファッションの流行もかなり早く変化しています。スーツスタイルの流行もかなり流れが速くなってきています。
例えばシャツで最近までホリゾンタルという襟型(襟の開きがほぼ180度)が流行していましたが、今はワイド(襟の開き角度が100度~120度)が主流となっています。さらに襟羽長さ(襟羽の付け根から先までの長さ)も短くなってきています。
5年くらい前に流行ったドゥエボットーニ (衿台に2つのボタンがある衿型)はもはや着ている人を見つけれ方が難しい...今着ている人がいればダサいと思われる可能性が非常に高いです。
私はそういった流行に流されずに自分が触れて良いと思うもの、ずっと着ていたいと思うものがあれば十分です。そのずっと着ていたいと思えるものがフルオーダーだったという話です。
ですので今後もフルオーダーでスーツを仕立てる予定ではいます。
ちなみに私が仕立ててもらっているのは神戸の名店石田洋服店です。興味がありましたら一度お店に行ってみてはいかがでしょうか?
ご覧いただきありがとうございました。