日本には多くのオーダースーツ専門店が存在します。
それなのにオーダーの価格は2~3万円台という低価格のお店から30万円を超す高級なお店も存在します。
私の個人的な考えでは15万円くらいまでで仕立てることができるオーダーはパターンオーダーやイージーオーダーだと思います。
パターンオーダー、イージーオーダーとは、体形に近い型紙を組み合わせて作り上げるオーダーシステムです。
サイズ調整をした既製品という感じです。
ワンランク上にフルオーダー、ビスポークという世界があります。
これは一人一人の体形に合わせて作成された型紙から生地を裁断し仮縫いを行ってサイズ調整、補正をして完成するオーダースーツです。
フルオーダースーツは着心地という点ではパターンオーダーやイージーオーダーとは雲泥の差があります。
スーツのディエールやフォルムはお店によってスタイルがあるり好みの問題なのでフルオーダーのお店がスーツの見た目も優れているとは必ずしも言えません。
今回依頼している石田洋服店はフルオーダー、ビスポーク専門のオーダースーツ専門店となります。
以前に石田洋服店でキャメルジャケットのハンドメードを依頼(2着目)で紹介しましたジャケットの中仮縫いについてご紹介します。
本当は中縫いの前段階で仮縫いを行っていましたが...
写真を取り忘れていました...
というのも仮縫いをしたときは、仮縫いの予定なく石田洋服店を訪ねて、秋冬の生地を見ていたときに偶然仮縫いが上がってきたので、私もなんの準備もしていなかったのです。
....というわけで仮縫いの次に行う中縫いについてのレビューです。
こんな方におすすめ
- 本物志向、長く愛用できるものが欲しい方
- フルオーダーに興味がある方
- 仮縫い、中縫いは何が違う?と疑問をお持ちの方
もくじ
どうして仮縫い、中縫いが必要なのか?
仮縫いの必要性は?
オーダースーツを注文すると仮縫いという聞きなれない用語が出てきます。
仮縫いというくらいですからサイズの調整をするために仮に組んでいるというイメージではないでしょうか?
そのイメージは正解で、仮縫いはサイズの微調整を行うために仮組の状態でできています。
仮縫いのメリット
仮組なので着丈やラペル幅などの見た目の微調整ができるのでより満足度の高いスーツが仕上がる可能性が高い
体形のクセなどの補正を補正を行うことで着心地の良い仕上がりになる
仮組のスーツを実際に着ると、採寸通りでは確認できない体系の癖が確認できます。
私の場合だと、
- 前肩の癖が強い
- 肩甲骨が開いている上に肩がデカい
という特徴があります。
これは採寸しただけではなかなか確認できないものです。
採寸した人が型紙を作成し、仮縫いを行い、補正をして工場に指示を出すというお店であっても同様です。
実際に着てみることが非常に大切です。
写真を見ている限りでは癖がないように見えますが、既製品のジャケットを着ると必ずと言っていいほど肩の収まりが悪く、ストレスを感じます。
中縫いの必要性は?
石田洋服店の中縫いはジャケットでは前身ごろの完成、ベストやパンツについては仮縫いのさらなる仮縫いとなります。
仮縫いでは着心地や見た目など大きな変更、補正に対応できるのに対して、中縫いは8割以上完成している状態で着心地や見た目の補正が行えますが、仮縫いほど自由に補正は行えません。
ただし中縫いは肩パッドなどの見た目を左右する副素材を入れているので仮縫いのときより具体的な完成形がイメージできます。
肩幅や着丈、背中やウエストのシルエットなどの微調整ができます。
そして着心地についても最終的な確認を行います。
肩の収まりは良いか?アームホールはサイズはどうか?などの確認をしていきます。
どんなのが出来上がるのか
何も注文を付けない状態だと前回と同じデザインで仕上がってきますが今回は、少し修正を入れました。
前回仕立てたスーツ
今回依頼したキャメルジャケット
前回作成していただいたスーツの形がベースとなります。
紺のスーツと比較しようにも写真は同じ画角ではないのでわかりずらいのですが、前回仕立てた紺のスーツのデザインをベースとして
- ゴージの高さを5mm下げる
- 胸ポケットの位置も5mm下げる
- 着丈を71cm → 72cmに変更
- ウエストを少しゆったり気味に
以上が今回依頼した内容となります。
何も注文を付けないで状態だと前回と同じデザインで仕上がってきますが今回は、少し修正を入れました。
紺のスーツは都会的な印象で強そうな印象があるのに対してキャメルのジャケットは田舎というかすこしリラックスした見た目にしました。
紺のスーツは全体的に上にボリュームがあるように見え強そうな印象があります。
対してベージュのジャケットは紺のスーツよりもボリュームが抑えられていて、とにかく普通という印象がします。
今回仕立てているキャメルのジャケットはとにかく普通。クラシックなデザインにしたいと相談しました。
個人的にはオシャレに気を遣う田舎紳士に仕上げたいという願望があります。(笑)
そのためには、いかにもオーダーでございますというような仕様にはせずに裏地、袖丈、着丈すべて普通にしました。
とにかく普通にしたいというだけです。
※オーダー経験が少ない人や生地や仕立てに拘り過ぎている人に多いのがマニカカミーチャ(雨振袖)やアンコン(芯なし)、ダブルステッチこだわったや裏地、袖ボタンのボタンホールやフラワーホールの色を変えるなどのデザインにしてほしいという要望ですが、あまりこだわり過ぎたデザインは飽きます。しかも好みが変化してしまうと着なくなってしまいます。非常にもったいないです。
私がオーダースーツ専門店で働いていて感じたことは、オーダーに慣れている人達は普通のスーツやジャケットを欲しがります。
とにかく凡庸、中庸といった特徴のないスーツ、ジャケットを仕立てることが多いです。
そういった人達は社会的な地位も高くスーツに対する考え方も、着る本人を引き立てるアイテムであったり会う相手に対する礼儀のためのアイテムに過ぎないので、こだわりがありません。
おわりに
人間の骨格や姿勢は本当に十人十色で、クセが強い体系の人やスポーツをやっていて筋肉や骨格が発達しううすぎていて既成のスーツを着てもきくずれ窮屈で疲れやすいという悩みを持っている方は非常に多いです。
当ブログでは何度か申していますが、既製品で自身の体形にピッタリと合う ということは奇跡でもない限りはあり得ません。
既製品は最大公約数に合わせて作られているので基本的には誰でもそこそこ着れます。ただしそれは外見上、外からの見た目の話です。
私が働いていた当時のお客様で既製品での悩みとして
肩が後ろに引っ張られる、前屈しにくい、腕を前に出すと前肩部分が引っ掛かる、膝に引っ掛かる、椅子に座るとズボンが下にズレる、太ももが張る、襟が抜ける、服が拝んで見える、臀部の生地が余るまたは張り過ぎている...
この他にも非常に多くの悩みがありました。
本当の意味でサイズが合っている服とは体の曲線や癖など対応して窮屈に感じさせない服のことです。
既製品ではほぼ不可能ということになります。
既製品でもサイズ補正を専門としているお店で調整できますが限界があり変なシワを取ったり、丈を詰めることはできても着心地を改善はできないと考えてよいでしょう。
しかしオーダーにも欠点はあります
オーダースーツのデメリット
- 見た目のイメージが難しい
- 値段が高い
- 納期がかかる(2か月~3か月くらい)
この3つの障壁がオーダーを躊躇させる原因であることが多いです。
初心者の方にとっては完成したときイメージしていたものとは違うスーツに仕上がり、しかも高額取られる...そんな残念な結果だけは避けたいところです。
既製品の場合は完成品が目の前にあるので着た時にすぐイメージができますが、オーダーの場合は生地のみです。
さらにお店によってスタイルが違うので完成品のイメージは容易ではありません。
あるお店は肩幅をしっかりとりパッドも多く入れて男らしさを強調したり、あるお店では肩幅を狭くしてパッドも少なくし女性的な柔らかいフォルムにしているお店もあります。
そこでオーダーのお店では完成イメージとしてサンプルを多く置いています。さらにお店の人は当然自分のお店のスーツを着ていますので、それがお店の完成イメージ、ハウススタイルとなります。
私は石田洋服店の構築的なスーツスタイルが好きなのでお願いしていますが、イギリスっぽいスーツであったり、ナポリっぽいスーツが好きというのであれば他で仕立てたでしょう。要は一概にこのお店が最高とはないのです。
ですのでオーダーに興味があるという方は、少しでも興味のあるお店に片っ端から見に行くことをオススメします。
- お店の雰囲気や店員と良好な関係を築けそうか?
- お店のサンプルを着させてもらったりお店の人のスーツが自分のイメージに合うか?
こういった点を確認するためにも実際に店舗に訪問してください。
次回は完成したジャケットとその着初めから、着慣れるまでをちゃんと記録しようと思います。
ご覧いただきありがとうございました。